![]()
|
●はじめに
|
|||
|
セルフメデケーション(自らの健康は自分で維持管理していくこと)の普及により、従来では通常の食事と医薬品の関係だけに注意をしていれば良かったのですが、最近では街中に氾濫している健康食品・各種ビタミン剤・サプリメント・その他関連類似食品との相互作用を考慮せざるをえなくなりました。 これとは逆に、医薬品の副作用防止やその主目的に付随して体内の必要な成分が不足してしまう事を補うような健康食品・ビタミン類も多くありますので、このような場合にはお薬と一緒に最適な健康食品を積極的に摂取したほうがよいでしょう。 現在、国内外において、多くの相互作用に関する試験研究が進行中だそうで、薬剤師としても常に新しい情報を収集し、国民の皆様の健康維持にお役に立ちたいと思っております。 お薬が体の中でどのように変化して、最後にはどのようにして体の外へ出ていくのかという過程で何んらかの問題が生じた時に、本来の目的ではない有害な症状(相互作用)が起きます。 厳密に言いますと食品を含めてすべてのお口から入るモノは、お薬との相互作用が0%だなんて事はないのかもしれませんが、お薬を作っている医薬品メーカーさんはその事も考慮して注意文書を作成したり、非常に苦労して世の中に薬に立つ「医薬品」を創製して臨床上問題とならない優秀な「医薬品」を世の中に出しているといってもよいでしょう。 現実には、量的なことで必ずしも問題なかったり(薬物代謝酵素の阻害誘導は量的にも様々に変化しますし)、あるいは人間の個体差・人種間の個体差などもありコレだから必ずコウなるというものではありません。また、併用しても医師・薬剤師の管理下であれば使用法の工夫により問題とならないもの(対処可)も多くあります。わずかな症例報告や実験上相互に悪影響を及ぼす例を含めて相互作用の一例を大まかに以下のような表にして作成してみました。 |
|||
|
食品・健康食品・ミネラル・生薬
|
併用した医薬品
|
相互作用の内容
|
| ビタミンA | テトラサイクリン系抗生剤 | お薬による頭痛が増強(頭蓋内圧の亢進による) |
| ワルファリン(血栓予防) | ワルファリンの作用増強 | |
| パクリタキセル(注射のみ販売) | 薬剤の副作用増強、骨髄抑制 | |
| エトレチナート(角化症治療) | ビタミンA過剰症 | |
| ビタミンC | アセタゾラミド(緑内障治療他) | 腎・尿路結石 |
| メシル酸デフェロキサミン | 心機能低下 | |
| ジエチルスチルベストール・エストロゲン | 薬剤(血中エストロゲン濃度)の上昇 | |
| ビタミンD | アルファカルシドール | 高カルシウム血症 |
| ジゴキシン | 薬剤の副作用増強 | |
| コエンザイムQ10 | ワルファリン(血栓予防) | 薬剤の薬効減弱、血栓形成 |
| ビタミンK | ワルファリン(血栓予防) | 薬剤の薬効減弱、血栓形成 |
| 抗酸化物質 (ビタミンE・C・βカロチン・セレニウム) |
シンバスタチン(高脂血症治療) | 薬剤の薬効減弱 |
| カモミール(ハーブ) | ワルファリン(血栓予防) | 薬剤の薬効減弱 |
| エキナセア | 蛋白同化ステロイド アミオダロン(不整脈薬) メソトレキセート(免疫抑制・抗リウマチ剤) ケトコナゾール(真菌治療) |
肝臓障害 |
| シクロスポリン(免疫抑制薬) | 免疫抑制作用減弱 | |
| プレドニゾロン | 免疫抑制作用減弱 | |
| ミダゾラム(睡眠薬) | 血中濃度の上昇 | |
| ウコン | ワルファリン(血栓予防) | 薬の作用が強く出る(出血傾向) |
| エゾウコギ | ジゴキシン |
ジギタリス中毒(その他多くの薬用植物にはジゴキシン様物質を含有し、ジゴキシン血清中濃度の上昇) ジゴキシンはP糖蛋白質により輸送される基質であり、腎尿細管刷子縁膜においてP糖蛋白質を介して分泌されること、臨床上重要なキニジン、ベラパミルとの相互作用はP糖蛋白質の阻害に起因することが解明されている。 |
| ワルファリン(血栓予防) | 薬の作用が強く出る(出血傾向) | |
| カート茶 | アモキシシリン(抗生剤) | 抗菌作用減弱 |
| カバKava | アルプラゾラム(抗不安薬) 他の睡眠薬・抗精神薬(中枢神経抑制薬) |
眠気などの副作用出現、薬の作用が強く出る可能性(相加的) |
| ノコギリヤシ | 鉄化合物製剤 | 増血作用の減弱 |
| 前立腺肥大治療薬 女性ホルモン・経口避妊薬 |
薬の作用が強く出る可能性 | |
| バレリアン | 鉄化合物製剤 | 増血作用の減弱 |
| バルビタール系薬剤(睡眠薬・抗けいれん) | 薬の作用が強く出る(睡眠時間の延長) | |
| フィーバーフュー | アスピリン | 出血傾向 |
| 鉄化合物製剤 | 増血作用の減弱 | |
| ワルファリン(血栓予防) | 薬の作用が強く出る(出血傾向) | |
| クロレラ・ケール・青汁 | ワルファリン(血栓予防) | ワルファリンの作用減弱(抗血液凝固作用の低下) |
|
納豆・ブロッコリー・パセリ・ホウレン草・シュンギク・レタスなど緑色野菜の多量摂取 卵黄・魚脂・肝(キモ)・植物油なども同様 |
ワルファリン(血栓予防) | ワルファリンの作用減弱(抗血液凝固作用の低下) |
| ガルシニア・カンボジア | アスピリン | 出血傾向 |
| 高麗ニンジンGinseng | 副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)(膠原病・喘息治療など) | 薬の作用が強く出る可能性 |
| ワルファリン・アスピリン(血栓予防) | 薬の作用が強く出る可能性 | |
| フロセミド(利尿・高圧剤) | 利尿作用の減弱 | |
|
セント・ジョーンズ・ワートSJW セントジョーンズワートSJWは、併用薬物の血中濃度を低下させる場合が多く、肝臓でMRP2の過剰発現をもたらすことも分かっております。 |
インジナビル・サキナビル(抗HIV) ワルファリン・シクロスポリン・タクロリムス・経口避妊薬・抗てんかん薬・抗不整脈薬・抗悪性腫瘍薬など多岐にわたる |
薬効の減弱 (小腸上皮細胞内のCYP3A4及びMRPが誘導される為) |
| テオフィリン・アミノフィリン(気管支拡張)(CYP1A2の基質) オメプラゾール(消化性潰瘍治療・プロトンポンプ阻害) |
薬効の減弱 |
|
| MAO阻害薬(抗うつ薬の一種) | 薬の作用が強く出る可能性 | |
| SSRI(抗うつ薬の一種) | 薬の作用が強く出る可能性 | |
| ピロキシカム(鎮痛剤) テトラサイクリン(抗生剤) |
光過敏症が起こる可能性 | |
| シンバスタチン(高脂血症治療) | 薬剤の薬効減弱 | |
|
ニンニクエキスGarlic |
サキナビル(抗HIV) | 薬剤の薬効減弱(血中濃度低下) |
| ワルファリン(血栓予防) | 薬の作用が強く出る(通常の食事程度では心配ない) | |
| ショウガGinger | ワルファリン(血栓予防) | 薬の作用が強く出る(通常の食事程度では心配ない) |
| サイリウムPsyllium(オオバコ種子の外皮で粘着性があり、便秘・整腸・コレステロール排泄作用がある。) | 炭酸リチウム(躁病治療) | 薬剤の薬効減弱 |
| イチョウ葉エキスGBE |
カルシウム拮抗薬(高血圧治療) |
薬の作用が強く出る(血中濃度上昇)可能性 |
| サイアザイド系利尿降圧剤 | 薬剤の薬効減弱(血圧上昇) | |
|
|
||
|
グレープフルーツジュース ところで、グレープフルーツジュースGFJをそんなに多くの量を日本人が(例えば朝食に)摂取するでしょうか?(米国人は習慣的に飲むのかな?)多少のGFJを摂ったからといって臨床上問題となり今までに事件が起きた例はありません。 |
カルシウム拮抗薬(高血圧治療) (CYP3A4の基質) 但し、すべてのカルシウム拮抗薬が問題となるわけではないので薬剤師へお問い合せ下さい。 |
薬の作用が強く出る→過度の血圧低下(血中濃度上昇) 注意:フラノクマリン誘導体は、セリ科植物(セリ・パセリなど)うや生薬(ビャクシ・キョウカツ・ボウフウ・ハマウドなど)、クワ科植物(イチジクなど)にも含まれているので、グレープフルーツジュース同様の注意が必要 |
| トリアゾラム・ミダゾラム(睡眠薬) カルバマゼピン・ゾニサミド(抗てんかん薬) シンバスタチン・アルトバスタチン(抗脂血症薬) シクロスポリン・タクロリムス(免疫抑制剤) タモキシフェン(抗癌剤) |
薬の作用が強く出る(主として薬物代謝酵素CYP3A4で代謝される為) 参考:プラバスタチン・ピタバスタチンは問題となる影響ない |
|
| イミプタミン・アミトリプチリン(抗うつ薬) | 薬の作用が強く出る(主に肝薬物代謝酵素CYP2D6で代謝し、CYP1A2,CYP3A4,CYP2C19も関与) | |
| エリスロマイシン・ジョサマイシン(抗生剤) | 薬の作用が強く出る(薬物代謝酵素CYP3Aで代謝するが、複合体形成によりCYP3A阻害作用もある為、薬物間の相互作用も多い) | |
| 塩酸アミオダロン(不整脈治療) | 薬の作用が強く出る可能性(主として肝代謝酵素CYP3A4で代謝され、半減期が長い(13.4時間)ことから、本剤中止後の他薬剤にも注意) | |
| ピモジド製剤(総合失調症) | 薬の作用が強く出る、血中濃度上昇(肝薬物代謝酵素CYP3A4で代謝、CYP2D6・CYP1A2も関与) | |
|
メチルプレドニゾロン・デキサメタゾン(副腎皮質ホルモン剤)(膠原病他) その他多くの薬剤が関連 |
薬の作用が強く出る可能性(主として薬物代謝酵素CYP3A4で代謝される為) デキサメタゾンは、薬物代謝酵素CYP3A4で代謝された後、CYP3A4の誘導作用をもつ) |
|
|
紅茶・コーヒー・濃い緑茶 カフェインについては、大量のコーヒー(200〜400mg)で眼圧2mmHg上昇。(コーヒー1杯85mg、紅茶50mg、コーラ360ml中に50mg含有) |
テオフリン・アミノフィリン(気管支拡張) | 薬の作用が強く出る |
| リチウム(炭酸リチウム) | 薬剤の薬効減弱 | |
| ジアゼパム | 薬剤の薬効減弱 | |
| 各種緑内障治療薬 |
薬剤の薬効減弱 参考:長時間の散瞳(映画・近業)、喫煙・うつ伏せ体位・大量の水は眼圧上昇に注意 |
|
| 牛乳などCa・Fe・Mg・Al・Znなどを含む食品 | テトラサイクリン・セファレキシン | 薬剤の薬効減弱(難溶性複合体キレート形成に伴う薬剤の消化管吸収の低下による) |
| 抗真菌薬 | ||
| ニューキノロン剤(抗生剤の一種) | ||
| リセドロン酸又はアレンドロン酸ナトリウム水和物 | ||
| カルシウム | ジゴキシン(強心剤) | ジギタリス中毒 |
| Fe(鉄) | セフジニル | 薬剤の薬効減弱(難溶性複合体キレート形成に伴う薬剤の消化管吸収の低下による) |
| ペニシラミン | ||
| アルコール | 他種薬剤と相互作用あり | |
| 喫煙 |
他種薬剤と相互作用あり(テオフィリン・フェナセチン・プロプラノロール・カフェイン等) |
喫煙により肝薬物代謝酵素が誘導され薬剤の血中濃度低下する。 |
| 特定保健用食品各種 | 同様目的薬剤 | 薬の作用が強く出る可能性 |
| 各種の生薬エキス(ソボク、ダイオウ、ゴミシ、キョウカツ、ビャクシ)* | 多種薬剤 | CYP3A4を阻害するので、この分子種に関連する薬剤に注意 |
| 各種の生薬エキス(オウバク、オウレン、ボウイ、ソボク、ダイオウ)* | 多種薬剤 |
CYP2D6を阻害するので、この分子種に関連する薬剤に注意 |
* ヒト肝ミクロソームを用いて漢方薬の成分である生薬エキス83種を調べた結果で、阻害活性の強いベスト5
(富山医科薬科大学和漢薬研究所・渡部烈、門田重利と三菱化学安全科学研究所による)



|
おわりに●
|
|||
|
このように意外なところにお薬と食品(生薬含む)との相互作用が存在しております。必要以上に神経質になる事はありませんが、臨床上問題とならなくても、服用中様々な食生活の変化により体調の変化が起きた時にその根拠をあらかじめ知っておくのは有意義な事です。また、予め副作用が起こらないようにする事はもちろんです。 その他、新しく発売される特定保健用食品などについても、医薬品との相互作用を考慮しながら、かかりつけの薬剤師さんへ気軽に質問されるとよいでしょう。また今回は、薬と薬の相互作用については膨大な情報量となる為、言及を避けました。 日本人は、ブームに流されやすいことがあるようです。確かな情報をお薬の専門である身近な薬剤師さんを活用し、患者さんとしても医師・薬剤師をはじめとする医療関係者と良好な関係を持つ事がひいては健康な生活を取り戻す事になるのかもしれませんね。 |
|||
| 参考 | ||||
|
||||
![]()
−参考文献−
薬物相互作用トップ100(医歯薬出版) 訳者代表:菅家 甫子
飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用(じほう)
薬局(南山堂) 1999、vol.50 p.2130 千葉 寛
薬局(南山堂) 2001、vol.52 No.2 p.1053
日経ドラッグインフォメーション(日経BP(社)) 2001.3.41号 p26
細胞 増大号 特集チトクロームP450遺伝子多型(ニュー・サイエンス(社)) 2001.11
日経ドラッグインフォメーション(日経BP(社)) 2002.2.52号 p32
医薬ジャーナル(医薬ジャーナル(社)) 2003、vol.39 No.2 p153
Hint de ファーマシー(日経メディカル開発) 2004.7.35号
日経ドラッグインフォメーション(日経BP(社)) 2004.7.81号 p42
Hint de ファーマシー(日経メディカル開発) 2004.9.36号
各製薬メーカーの添付文書